生前の婆さんの話。
祖父母の家に私が一人で遊びに行ったときのこと。
認知症の進んだ婆さんが,襖を開けて
寝転んでいる私に声をかけてきた。
そもそも夜中に,突然,婆さんが声をかけてきたのにも驚いたのだが,
さらに婆さんは,
「あんた一人で寝ていて可愛そうじゃないか。」
「部屋の隅に座っている子供にも布団を敷いてやりんさい。」
と広島弁で私に話しかけて,そのまま出て行った。
婆さんの表情は真剣そのものである。
しかしながら,もちろんそんな子供なんていない。
私一人きりである。
気味が悪い。
婆さんの認知症が進んでいたことにも血の気が引いたが
それ以上に,婆さんにはとうとう幽霊が見えるようになったのかと
思うともっと血の気が引いた。
今となっては,あの子供は一体何だったのかは不明である。
ちなみに,私の寝ていた部屋の隣は,襖一枚挟んで仏間である。
2013年6月13日
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