１９４５年８月６日午前８時１５分，広島に原爆が投下された。
同月１５日，終戦。
その後，日本は目覚ましい復興を遂げた。

２０１４年７月２６日午後７時３０分，熊谷バーニングマンレース終了。
当時，私は最終ランナーであり，ゴールを目指して，熊谷陸上競技場外を走行していた。
内地から風に乗ってアナウンスが聞こえてきた。

「３，２，１，終～了！（歓声）」
「（しばし沈黙）」
「・・・朕深ク世界ノ大勢ト熊谷ノ現状トニ鑑ミ
非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾ランナーニ告ク・・・」
「・・・今後熊谷ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス
爾ランナーノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所
堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス・・・」

どうやらマラソンが終わったという玉音放送のようであった。
外地で終戦を迎えた最終ランナーは，放心状態であった。
天を仰ぐ者，膝に手を突いてうな垂れる者，座り込んで動かない者，終戦を信じずまだ走り続ける者等。
続けてアナウンスは，競技場内に至急戻れという。
我々最終ランナーは，自力走行できる者は順次内地に戻り始めた。
途中，行田が攻めてくるというデマも飛び，混乱をきわめた。
私は，あの猛暑の中，身一つで生き延びた。
あの夏以来，一度も走っていない。

マラソンが終わった日から既に１１日。
私も復興に向かって走りださなければならない。
熊谷で散った走者達の供養のためにも。

ちなみに，熊谷陸上競技場では，いまだに終戦を知らず走り続けているランナーがいるという。

2014年8月6日

五十川剛俊

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