私も一昨年前に広島の祖母が亡くなった。
祖母の思い出に触れてみたい。
私は,大学卒業後,司法試験を何度も受験したが
その壁は厚く散々苦しめられた。
毎年,今年こそはという思いで挑むものの
結果が出ず,失意のまま広島の祖父母の家に
転がり込んでいた。
こんな私を祖父母は暖かく向かい入れてくれていた。
祖母は,私の耳元で「今年もダメだったんか?」と
内緒話をするように聞いてきた。
祖母なりに配慮してくれていたようだが,どうにも
我慢が出来なかったらしい。
毎年そんな感じであったが,私も何とか司法試験に
合格できた。
ただ,長い時間がかかったため,祖母は軽い認知症となっていた。
私が合格した後も,まるで思い出したかのように
私の耳元で「今年もだめだったんか?」と聞いてきた。
その都度,私は合格したことを報告した。
毎回,祖母は一瞬驚いて,嬉しそうに喜んでくれていた。
認知症が進み,私のことを忘れても
ふと昔の記憶が蘇って私に「今年もだめだったんか?」と聞いてきた。
祖母にとって,私の将来が心配だったのかもしれない。
祖母にも随分苦労をかけたものだと思っている。
そんな私も4月に独立した。
祖母が亡くなって一年になるが
仮に祖母がいつものように「今年もだめだったんか?」と聞いてくれたなら
今だったらどれほど驚いてくれて,喜んでくれただろうか。
叶わぬ夢であるが,祖母に「もう心配いらないよ」と伝えてみたいものである。
2013年4月30日
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